久しぶりのブログ投稿です。患者さんとの会話で、嬉しいことが有ったのでブログに書きたいと思いました。
今回のヒロインは小学5年生のTちゃんです。Tちゃんのお母様は以前より当院に来院されていたのですが、Tちゃんが当院に来られたのは今年から。残念ながら虫歯が多く、地道に飯田先生が治してくれていました。ですが、さらに残念のことに数年前に生えてきたばっかりの右上の第一大臼歯の虫歯が大きく、悪いところを取除いたら神経まで至ってしまったのです!
飯田先生は神経の出てしまった歯を一旦、痛み止めの効果のあるお薬で仮の蓋をして、お母様とTちゃんに「神経を抜かずに神経を残す治療、MTAセメントのお話」をして、その日の治療を終えました。Tちゃんはお母さんと相談してMTAセメントを使うことにしたので、私の予約を取ってくれました。
次の回、Tちゃんの歯に麻酔をして、麻酔が効くのを待っている間、2人でお話をすることができました。
「Tちゃんてかわいい名前だね。Tちゃんは歯磨きあんまりしないの?歯磨き嫌い?」の質問に
「歯磨きをする意味がわからない」とTちゃん。
「そっか、そうだったのか。分かった。歯ってさ、永久歯に生え代わったらもう代えられないの。このまま70才、80才になるまで使い続けないといけないの。今からちゃんと丁寧に使っておかないといけない訳。取り替えられない歯車みたいに、ただ普通に使ってるだけでも、この先割れたり、すり減ったりして使いづらくなってくるの。おばあちゃんになった時にはいろんな欲がなくなっちゃって、欲ってわかる?食欲しかなくなるって言われているのに、その時歯が悪いと美味しいものを食べる楽しみさえなくなっちゃって、寂しい老後を過ごして、死んでいくかもしれないんだよ。だから今からしっかり丁寧に歯を磨いて、大事に歯を使っていかないといけない訳なの」
「もしかしたら、お母さんが『歯磨きしなさい!』って言うから、逆に歯磨きしたくなくなっちゃってるのかな?」と聞くと
「うん」とTちゃんは大きくうなずいてくれました。
「そっか〜。それはお母さんがとっても後悔してるからだと思うよ。歯が悪くなちゃったことで、悪くなる前にしっかり磨いておけばよかったって思ってるから、かわいい娘には同じ思いをさせたくないから、うるさく言うんだよ。なので、反抗してないで、自分のために磨こうね」
とお話して、治療に入りました。
神経の露出してしまったところをMTAセメントで覆い、硬い樹脂系の素材で歯の形を作り、かみ合わせが高くないか確認して、その日の治療は問題なく終わりました。
念の為1ヶ月様子を見て、型を取りに来てもらいました。その時、始める前にTちゃんとお話しました。
「Tちゃん、歯磨いてる?」
「うん」と大きくうなずいてくれたので、
「何のために磨くの?」とちょっと意地悪な質問をしたところ、Tちゃんは少し時間を置いてから
「自分の将来のため」と恥ずかしそうに小さい声で、でもきちんと意思を持って言ってくれました。思わす、横で聞いていた衛生士と一緒に顔を見合わせ、拍手してしまいました!そしてお口の中を見たところ、今までプラークの付いていた歯がツルッツルでピッカピカになっていました!
『すっごくきれい!」と嬉しくて声を上げて褒めてしまったのは言うまでもありません。
Tちゃんはお母様と相談して、今回治すところは上の歯で目立たないこと、ずっと長持ちさせたいとのことで、金の詰め物にすることに決めました。私も心して形を整えて型を取りました。おばあちゃんになっても使い続けられるように!
そして、治療が終わった後、Tちゃんは治療台から立ち上がって
「先生、質問があるんですけど」
「はい、何でも聞いて」
「キシリトールって歯に良いって本当ですか?」とTちゃん
本当に聡明なTちゃん!歯をきれいに磨くようになってくれただけでも凄いのに、キシリトールにまで興味を持ってくれたなんて!本当に嬉しかったです!
「キシリトールはねお口の中の虫歯菌を減らすことは分かっているのだけど、本当にお口の中の菌を減らすためには1日何個ものガムを噛まないといけないそうなの。なのでそれは無理だから、もしガムを噛むなら、裏の成分が書いてあるところを見て、一番はじめに『水飴』って書いてあるものでなく『キシリトール』って書いてあるものを選んでね」とお話させてもらいました。
その後、担当衛生士から聞いた話ですが、歯垢(プラーク)の染め出し液も買って、お家でやってくれているとのこと。それも嬉しかったです。
Tちゃんこのまま歯に対する興味をもって大きくなって、きれいな歯と笑顔で、おばあちゃんになっても大切な家族に囲まれて、お食事を楽しんでくれたらと祈るばかりです。私も元気で歯医者ができる限りTちゃんの歯を守っていくからね。