院では、50代以上の患者様に口腔機能低下症の検査を積極的に受けていただいています。そのきっかけは、数年前に当院に通院されていた患者様が誤嚥性肺炎で亡くなられたことにあります。とても穏やかで優しい方で、きちんと定期的に通ってくださっていた患者様でした。
当時は、現在のように口腔機能低下症という概念や検査方法が十分に確立されておらず、私たちもその兆候を早期に見つけることができませんでした。「今だったら、もしかしたら助けられたかもしれない」——その思いは今でも強く残っており、非常に悔しく、そして残念でなりません。
皆さんは誤嚥性肺炎という病気をご存知でしょうか。誤嚥性肺炎とは、本来であれば食道へと送られるべき、噛み砕いた食べ物や飲み物が、喉周囲の筋肉の衰えによってうまくコントロールされず、誤って気管へ入り込んでしまうことで起こります。その結果、肺に炎症が生じ、肺炎を引き起こしてしまう状態を指します。
この原因のひとつが、喉周辺の筋肉の衰え、いわゆるオーラルフレイルです。オーラルフレイルは見た目では分かりにくく、気づいた時にはすでに進行していることも少なくありません。
さらに、誤嚥性肺炎で入院された場合、多くのケースで一定期間「禁食」となり、口から食事を摂ることができなくなります。その間は鼻からのチューブや胃ろうなどで栄養補給を行うことになりますが、口や喉の筋肉を使わない期間が続くことで、筋力はさらに低下してしまいます。
筋肉は使わなければ確実に衰えます。わずか1週間でも筋力を使わなければ、通常の生活をしている筋力の衰えに比べ、3年分も低下してしまうと言われています。回復しても、その後、再び口から食事を摂ろうとした際に、再度、誤嚥を起こしやすくなってきまい、肺炎になってしまうという悪循環に陥ることも少なくありません。
特に70代以降でオーラルフレイルが見つかってからトレーニングを開始しても、筋力の回復には時間がかかり、元の状態に戻すことは簡単ではありません。そのため、50代のうちから検査を行い、筋力が低下する前に予防的にトレーニングを開始することが非常に重要です。
ただし、60代・70代・80代からトレーニングを始めても意味がないというわけではありません。今ある機能を維持し、これ以上悪化させないためにも、適切なトレーニングは大切です。
以前は、この口腔機能低下症の検査は保険適用ではありませんでしたが、現在では厚生労働省もオーラルフレイルの重要性を重く受け止め、50歳以上の方であれば保険で検査を受けることが可能になりました。
また、このオーラルフレイルは一般のお医者さんでは見つけることが難しく、歯医者だからこそ気づけるサインがあります。例えば、仰向けの状態で歯石除去や治療を行う際、水をうまくせき止められず、咳き込んでしまう方は、オーラルフレイルの兆候です。
また、最近食事中にむせる、会話中に少しロレツが回らなく感じることがある、唾液が少なくなってきたかも?などお気づきのことはないですか?
当院では、武蔵小山周辺の歯科医院に先駆けて、この口腔機能低下症の検査を導入し、日々の診療の中で積極的に行っております。それは、あの時の患者様のように、誤嚥性肺炎によって命を落とす方を二度と出したくないという強い思いからです。
一人でも多くの方に早期発見・早期にトレーニングをして頂き、健康で安心して日常生活を送って頂き、何よりお食事をご家族やお友達と楽しんで頂けるよう、私たちは誠実にこの検査に取り組んでおります!
ちなみに、院長はアンチエイジング歯科学会の指導医です。ご不安なこと、分からないことがありましたらお尋ね下さい。

